森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

2022年03月12日(土) 森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー (徒歩)

熊野修験再興33周年を迎え、写真家の森武史さんは20年間、熊野修験者とともに修行しながら撮り続けた作品を2020年9月1日に写真集「熊野修験」として出版された。

【参考】

 

また、同タイトル「熊野修験」の写真展が、世界遺産熊野本宮館や加太北丁自治会館(和歌山市加太)、熊野古道センターで開催されたが、コロナ禍の最中だったので私は観覧できずにいた。(写真集は写真展を観覧してから求めようと思っていたが。)

今回、森武史写真展 熊野修験 が伊勢の地で開催されることになったので

森武史 写真展「熊野修験」
会期 ◎ 2022年2月26日(土) – 3月27日(日) ◎ 9:30 – 16:30
◎ 3月6日(日)・13日(日)・20日(日)は休館
会場 ◎ 伊勢和紙ギャラリー (大豐和紙工業株式会社 内) ◎ 516-0079 三重県 伊勢市 大世古一丁目 10-30 ◎ (0596)28-2359 ◎ https://isewashi.co.jp/

◎ 2020年・21年に再興三十三周年記念写真展として「世界遺産熊野本宮館」「葛城二十八宿始まりの地 加太」「三重県立熊野古道センター」にて展示した作品群に続き、未発表作品を中心に開催します。
◎ 「熊野修験」は、2008年には再興二十周年記念写真展として伊勢和紙ギャラリーで開催し、その後パリ・東京・京都に巡回しました。
◎ 写真家 森武史 1957年生まれ
◎ 2014年 キヤノンカレンダー作家
◎ 「くまのみち」「絶海(鳥羽の離島)」「神宮の森」「熊野修験」など多数

【引用】 大豐和紙工業株式会社のホームページより

 

【キタヰの妻】とともに伊勢和紙ギャラリーを訪れた。

いつもの写真展とは異なり、この場所にもポスターが展示されていた。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

玄関で引き戸を開けると、視線の先には修験者の大きな顔が迎えてくれた。(思わず仰け反る感覚だ)

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

受付には森さんの略歴が記されている。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

なお、詳細は森さんのホームページを

【参考】 写真家 森武史 ホームページ

 

会場には、 那智山青岸渡寺副住職 熊野修験正大先達である高木亮英さんが記した「熊野修験再興33周年を迎えて」の文章が掲示されていた。熊野修験について知るため、ここで紹介しておこう。

熊野修験再興33周年を迎えて
那智山青岸渡寺副住職 熊野修験正大先達 高木亮英

熊野信仰に依って立つ修験道が熊野修験です。
熊野信仰とは熊野三山、すなわち本宮、新宮、那智への信仰のことで、複合的で開放的、かつ広域性を持つのが特徴です。神仏習合ともいわれますが、神道、仏教、修験道、陰陽道などあらゆる宗教が認め合い、融合して形成されています。諸人に開放的で、貴賎を問わず信不信を問わず、浄不浄をきらわずに受け入れてきました。神仏の前にあってはみな平等という考え方です。
熊野信仰はとても広汎で、南は沖縄の琉球八社から北は青森まで、全国津々浦々の五千ものお宮が熊野の神さま、昔は仏さまをおまつりし熊野神社を名乗っていました。かくまで熊野信仰を広めたのは、熊野山中で修行された山伏、熊野修験者でした。
修験道の開祖は神変大菩薩、つまり役行者です。今からおよそ千三百年前の飛鳥時代、大和の葛城に生を享け、葛木山に入って山岳修行を行い、熊野や大峯の山々で修行を重ねて吉野の金峯山へ至り、霊験を得られました。また平安時代には、三井寺の智証大師(円珍)が那智の滝や大峯を修行の場とされました。そういった修験者の活躍により熊野は日本第一霊験所と位置づけられるに至ったのです。ところが時代が下り明治維新を迎えると、廃仏毀釈の風潮が広がり、明治五年(1872)には修験道廃止令が出され、熊野修験も途絶えてしまいました。
私が熊野修験を再興したのは、昭和六十三年(1988)。前年に逝去した父・高木亮孝(那智山青岸渡寺第七世大僧正)の遺品を整理していたとき、箪笥に鈴懸など山伏装束の一式を見つけた私は、熊野修験の再興こそが父の想いと知り、父への追善供養とともに、自分に課された使命と考えたのです。大峯道の整備をされていた「新宮山彦ぐるーぷ」の方々にご案内いただき、再興の第一歩を刻みました。
熊野修験の活動は、春と秋の熊野大峯七十五靡[なびき]順峯奥駈、友が島から法華経塚を巡る春の葛城二十八宿行、厳寒の那智四十八滝回峯行に加えて、諸国の聖地霊山巡礼があります。熊野信仰が伝わったと思われる地に赴いて先人の労苦を偲び、勤行して碑伝[ひで]を納めてくるのです。それは国内にとどまらず、世界中の聖地、霊山に赴いています。
熊野修験は、山林抖擻[とそう](山中を駈け雑念を払い修行に励むこと)を通して大自然に触れ、自己を見つめ直す擬死再生の場。押し合いへし合い都会に暮らしている方々も、熊野の大自然で六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)を清浄していただければ。その体験を通して得た霊験を他の人々にほどこしてこそ、修験の本質である菩薩行、すなわち上求菩提下化衆生[じょうぐぼだいげけしゅじょう](上に向かっては悟りを求め、下に向かっては衆生を教化する)の境地と言えましょう。

[熊野修験再興年表]
1872年(明治5年) 修験道廃止令により熊野修験途絶える
1988年(昭和63年) 熊野大峯南奥駈を4人で始める。熊野修験再興
1989年(平成元年) 世界宗教サミット参加(オーストラリア)
国内外の聖地・霊山への登拝、巡礼開始
1992年(平成4年) 那智四十八滝回峰行復活
1994年(平成6年) 葛城二十八宿行を始める
2004年(平成16年) 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録
2007年(平成19年) 熊野本宮大斎原にて熊野修験再興20周年採燈大護摩厳修
2012年(平成24年) 那智山青岸渡寺にて熊野修験再興25周年採燈大護摩厳修
2020年(令和2年) 再興33周年を記念して「熊野修験」写真集発行

 

ここにも登場し、熊野修験を実現できた立役者である「新宮山彦ぐるーぷ」については、当グループのホームページで詳しく紹介されている

【参考】

 

また、森さんがなぜに熊野修験を撮ることにあったかの理由は、以下の動画で紹介されている。

(私は直接伺ったが、ぜひとも動画の確認を・・・)

 

前ふりが長くなってしまったが、こちらが展示作品の一部。(本日は、森さんが在廊されていて、詳細に説明していただいた。)

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

透過光を活用するため、和紙は2枚重ねとなっている。1枚だけだと黒がグレーっぽくなるが、二枚だと黒が引き締まる。

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

この写真ともう一枚は、ドローンで撮影した24枚の写真をPhotoshopで一発合成したもの。

修験者がいる右側の頂から法螺貝の音が聞こえたら、左側の頂からドローンを飛ばして撮影した時のもので、頂の間隔は2kmである。

 

こちらはモノクロ写真を中心とした展示となっていた。ただし、モノクロチックなカラーの風景も展示されている。(その作品を森さんは気に入っていると。さて、どの作品だろう?)

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

こちらで、私のお気に入りは次の2枚。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

他にも素晴らしい作品ばかり。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

メインギャラリーでの展示作品にも人物の写真が多い。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

なぜに、人物写真が多いのか。

修験の活動は朝早くから夕方遅くまで歩く修行の連続で、ゆっくりとできる時間など無い。修験者と同じ行動なので、カメラなども最小限で三脚などは持ち歩けない。風景をゆっくりと撮影している時間がないから、自ずと人物の撮影となる。

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

私は歳を取っていくが、修験は若返る(年配者はサポートを担当するようになり、新たに若者が参加してくる)ので、最年長者である。

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

修験者の目の前でカメラを構えても、彼らは平静を保っている。

これは20年間の時間をかけて信頼関係を築き上げた森さんだから成せる技なのだろう。

 

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

最後に、やはりこの展示は圧巻だった。ほぼ等身大であり、臨場感が半端ではない。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

展示会場に身を置いていると修験者が発する「懺悔懺悔六根清浄」の声が響き渡り、私も心の中で唱えていた。

さーんげさんげろっこんしょうじょう

 

 

また、今回の写真展では関連動画が Youtube で公開されている。(ただし、限定とあるので開催期間を終えると見えないかもしれない)

 


写真家 森武史氏による作品みどころ紹介(伊勢和紙ギャラリー 森武史 写真展「熊野修験」2022.2.26〜3.27)

 

「熊野修験」写真家 森武史×花井淳英 先達トークショー

 

「熊野修験」花井先達による講演


 

最後に、こちらは今展示ハイライトと使用された伊勢和紙の種類が説明されている資料。

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

森武史写真展 熊野修験@伊勢和紙ギャラリー

 

展示内容、展示方法、すべてにおいて感じごたえのある写真展だった。

伊勢の各所に残されている役行者(役小角)の像を思い浮かべながら、伊勢和紙ギャラリーを後にした。(【キタヰの妻】も感動していた。)

 

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