2025年06月22日(日) 関係人口創生素材的歴史資料活用ツアー 《間之山遊郭》関係襖下張文書 伊勢宇治中之地蔵町の妓楼 山崎屋長兵衛関連文書【間之山編】 (徒歩)
河崎の古文書でお世話になっている千枝大志さんが「関係人口創生素材的歴史資料活用ツアー」を実施するとのことで、集合場所である五十鈴川駅へ向かった。(集合時刻10時30分)
今回のツアーで配付された資料の表紙はこちら。
去る3月23日(日)、中川運河ギャラリーでは、千枝さんの指導による『襖解体ショーで歴史資料をレスキュー ~誰でもできる【地方創生SDGs】【関係人口】~』が実施された。伊勢市河崎に一時保管されていた襖が会場へ運び込まれると、解体された。
私は参加していないが、このような状況だったのだろうと想像している。
【参考】
- 第一部 ふすまの解体ショー:河崎ふすま解体団による「ふすまの解体ショー&そこから出た古文書によるミステリーまち歩き」 2019年10月27日
- 「古襖の下張を剥がす」ワークショップ@旧御師丸岡宗大夫邸(伊勢市宮町) 2023年09月17日
- 千枝大志さんによる「伊勢御師橋村家伝来の屏風解体」体験@河崎蔵(伊勢市河崎) 2024年01月21日
この襖解体ショーでは、古市の茶屋女(遊女)に関連する訴状が見つかり、訴訟人は下中之地蔵町(現 中之町)の山崎屋長兵衛、訴えられた側(相手人)は河崎町(現 河崎)の北村清五郎と娘のはるゑ、さらに同町の上野利助らであった。
こちらが、千枝さんによるツアーの概要 である。
過日実施した名古屋市中川区運河ギャラリーでの襖の解体ショーで出現した、間の山とよばれたかつての日本三大遊郭の一つ伊勢市内の旧遊郭街を襖下張文書を頼りに散策します。新出史料は、下中之郷町の山崎屋長兵衛なる妓楼関係の江戸後期の古文書ですが、間の山遊郭関連の古文書は現存が極めて少なく貴重であり、そのような歴史資料が突然姿を現すことが、襖下張文書の魅力の一つと言えるでしょう。かくいう私も解体ショーが無ければその存在も知らなかったわけであり、まさに関係人口創出素材としての襖下張文書の現代的意義も見出し得るでしょう。
山崎屋長兵衛経営の妓楼は、今の伊勢市中之町にあったものと思われますが、幸い、古市細見が残されているため、大まかには場所は把握できていますので皆さんと場所を特定してみたいと考えています。
昨日は、河崎でツアーを実施し、訴えられた側(相手人)である北村清五郎と上野利助の所在地を確認したそうだ。その際、河邊七種神社の「古文書の会」による河崎古絵図のまとめが活躍した。
そして、ツアーの2日目は、訴訟人である山崎屋長兵衛が経営した妓楼の跡地を探索することに。この地域には河崎のような住人の所在を示す古絵図は見あたらない。しかし、かつて遊郭が建ち並んだ古市には、大河ドラマ「べらぼう」でも話題となった吉原細見(江戸時代の遊郭ガイドブック)と同じく、古市細見が残されていた。
今回は、山田(外宮地域)と宇治(内宮地域)の中間にあり、かつてはこの2地域を結ぶ唯一のルートであった間之山を散策しつつ、山崎屋長兵衛経営の妓楼を探索した。
定刻の10時30分になると、ツアー主催者である千枝大志さんの挨拶があり
ツアーが開始された。
間之山を通る古市街道(伊勢街道、参宮街道、古市参宮街道とも呼ばれる)は、私の小学生時代の通学路だったので、今は住宅地となっている大安も記憶にある。黒くて大きな建物、道路に面した出入口は閉ざされ、近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。修道小学校周辺の路地も懐かしい(もう半世紀も前の話)。
こちらの電柱の先で、右へ折れると
本誓寺への坂道へ。
山門の左手には
大きな五輪塔が立っているが、千枝さんから「あとでもっと大きな五輪塔があります」と。
墓石を少しだけ確認する。
伊勢自動車道の五十鈴高架橋の下をくぐると
その先を左方向へ、急な坂へ進んだ。
役目を終えた墓石が階段や石垣などに再利用される事例が紹介された。
さらに、神葬式の話題となると、参加者から神職の穢、仏式墓所との差別化などなど、さまざまな疑問が投げかけられた。
久世戸墓地を後にすると
続いては、大きな五輪塔が建つ大五輪を訪れた。
かつては宇治山田合戦の供養碑と伝えられていたが、奈良西大寺の律宗石工集団による叡尊五輪塔と関連すると指摘された時のエピソード(ここには書けない)が千枝さんから紹介されたが、その内容は強烈だった。
それにしても巨大。(隣に立つ女性の身長は約150cm)
この周辺に気になる古道も多い。
【参考】
- 久世戸共同墓地付近から古の(?)小道を辿ると 2017年08月27日
その後、修道小学校の校門脇に残された土蔵を確認しつつ
こちらの路地へ進んだ。ここは古市街道の隣にある岳道のさらに隣にある路地だ。
路地を突き抜けて、古市街道へ合流すると古市街道を中之町方向へ進んだ(戻った)。まずは古市の三大遊郭であった備前屋跡(三大の残り二軒は、杉本屋と油屋)。
古市街道から分岐する岳道の案内が、商店のシャッターに大きく描かれていた。
この道を進めば、さきほど訪れた本誓寺へたどり着ける。
【参考】
- かつての久世戸坂を想像しながら本誓寺へ 2017年08月27日
また、次の十字路を左、さきほど訪れた大五輪方向へ進むと、 倭姫宮へたどり着く。
街道を先へ進みこちら。古市には古市三座(口の芝居、中の芝居、奥の芝居)の芝居小屋があったが、口の芝居・長盛座跡にこの「古市芝居跡」が建っている。
名古屋からの参加者が多いので、案内地図での現状確認。
ここは伊勢古市郵便局の向かい側。
三重交通 古市バス停もある。
バス停の先で右方向の路地へ進むと、奥まった場所に大林寺が。
本堂の左手には
比翼塚がある。
寛政8年(1796)のこと、大林寺近くにあった遊郭「油屋」で事件が起こった。それは「油屋騒動」と呼ばれ、馴染みの遊女「お紺」がほかの座敷にとられたことで「孫福斎」が刀を振り回した刃傷沙汰である。比翼塚はその当事者であるお紺と孫福斎の菩提を弔うために塚で、左がお紺、右が孫福斎。今でも油屋騒動を題材とした舞台に出演する役者さんなどはこちらにお参りするという。
お紺の墓石には四十九、孫福斎の墓石には廿七と刻まれていたので、「年増好きだったのか?」との声があがった。「まさか?」とは思ったが、その事実を突き詰めたことがなかったので???
帰宅して調べると、孫福斎は事件の直後に自害しているので享年はその時のものだが、お紺は当時16歳(14〜15歳かも)だったようだ。享年だから事件当時の年齢ではなかったのだ。
現場での空気はこんなもんだ。冷静になれない自分もいた。
大林寺を後にすると騒動の現場であった油屋跡を通り過ぎ、近鉄を越えた。
長峯神社の先で、大安の跡地(気づいている方はいただろうか?)を通り過ぎると
本日の目的地にたどり着いた。
古市細見および他の資料によると、この場所が山崎屋長兵衛の経営した妓楼跡のようだ。
こちらが細見と資料。
中之町バス停の奥、こちらが妓楼跡だった。(他の方々はあまり関心が無さそうだった。建物がないと実感がわかないのだろうか)
妓楼跡を背にすると麻吉(旅館)へ向かった。
階段を下ると
その下には
この道標がある。つづら石は、かつて五十鈴ヶ丘団地にあったもので、団地の造成と自動車道の建設でこの道標近くに移転された。
さきほど下った階段を登り返すと
こちらで、寂照寺の経堂の屋根を眺めた。この光景は伊勢参宮名所図会のシーンでも確認できるもの。
その経堂がある寂照寺の前にて。
以前に、名古屋市博物館で開催された月僊展が懐かしい。地元の伊勢ではこんな展示はできないだろう。
【参考】
- 特別展 画僧 月僊 GESSEN@名古屋市博物館 2018年12月15日
鳥居が気になっている方がいたので、パチリ。
【参考】
- 「特別展 画僧 月僊」に刺激を受けて訪れた寂照寺にもお稲荷さん(伊勢市中之町) 2018年12月29日
寂照寺を後にすると最後に訪問地である伊勢古市参宮街道資料館へ。
本日はかなり暑かったので、空調が効いた館内で皆さんは涼みながらの見学。
私は、どうしても「大安」が気になり
かつてのこんな展示も思い出していた。
【参考】
- 平成30年度 特別企画展「大安旅館」にてVR体験(伊勢古市参宮街道資料館) 2018年07月21日
さらに、先日の御樋代木を奉搬したトラックの運転席後方に据えられた大型の箱祓を思い出しながら、こちらの大麻に魅入っていた。
【参考】
- 第六十三回神宮式年遷宮 御樋代木奉迎送行事(住吉浦〜桑名宗社) 2025年06月08日
以上で、本日の予定を終え、五十鈴川駅まで戻った。
かつて、つづら石があったとされる五十鈴ヶ丘団地の隅を
通り抜けると
坂道をくだった。
こちらのトンネルと抜けると
最後のひと踏ん張り。
予定の時刻に、ツアー・ゴールの五十鈴川駅へ戻ってきた。
今回は写真担当として参加したため、千枝さんの話をじっくりとは聞けず、こちらの記録にはほとんど反映できていない。それにしても、名古屋から参加された方々はこの短い時間で、しかも少ない情報量であるにもかかわらず、この地域について深く理解されているようだったのには驚いた。日頃、街歩きで鍛えた能力なのだろうか? 山崎屋長兵衛が経営した妓楼跡の所在がわかっただけで満足している私とは大違いだ。
なお、以前に千枝さんがこの周辺で実施したツアーの記録はこちら
【参考】
- 2017郷土を歩こう!「古地図で伊勢古市を歩くー麻吉旅館を訪ねてー」 2017年05月20日
さらに、この地「修道まちづくり会」のホームページには、この地域のマップやガイドが日本語版だけでなく、英語版までもがPDFで掲載されている。
【参考】
- 修道まちづくり会
- 修道の偉人[PDF] | 修道まちづくり会
- 古市参宮街道と周辺地域ガイドマップ手帳[PDF] | 修道まちづくり会